残念に思う事は「仕事だから仕方なく」やるということ。残念な事に大抵の人がそうだ。仕事じゃなきゃ何も始まらない。興味も持たない。そして、仕事の所為にして愚痴をこぼす。
まず、僕の主義として絶対に「できない」と言わない事にしているんです。これは、堀内家に修行に入って師匠である宗完宗匠から最初に教わった事でした。宗匠は行事のときに「僕は、『できない』とは言わない事にしているんやけれども…」といってから僕に手本を見せてくれました。そして、今でも僕の主義として「できない」は禁句としているんです。
コレは同時に、自分にできる事とできない事を瞬時に見抜くこと
できる技量と、できる事を増やす努力と、見ぬく目を養うことが宗匠が僕に最初に教えた事だと思って毎日精進しているわけでありますが、もともと見栄っ張りで負けん気が強い性格のために、ついつい、見誤ってしまう事があります。
先週もラジオでホルモン焼きの話をしたら「んじゃ、このまま飯の話でいこう!」って言う事になって、僕は「やだよ、徹夜で資料そろえてきたんだから」といって断っちゃったんですけれどもね、僕はそれを非常に後悔しておりまして、自分の集めたしょうもない資料惜しさに自分の主義を曲げてしまったなあと、三日三晩寝込むほど後悔したのであります。
その悔しさをバネに、一回、心身共に鍛え直してやろうと箱根の外輪山の一つ、明星が岳924メートルに行ってきました。
明星が岳というのは箱根の大文字焼きをやる山です。自宅から徒歩で三時間ほどかけて、まず、割留沢までいきまして、そこからさらに、奥割留沢の登山コース「明星登山道奥割留沢みはらしコース」を一時間強、登っていくと明星が岳はあります。
途中、下は小田原相模湾を一望する絶景、前は二子山、明神が岳を見ながらの素晴らしい景色でして、そこで食べるお弁当の美味しかった事。自分で決めたコースを自分で決めた時間内に攻略するのは清々しい達成感があります。
そしてそこから宮城野に抜けて強羅から箱根登山鉄道で小田原まで帰ってくるという感じで、口で言うと簡単そうですが大変なんです。これが。
事件はこのとき起きたのです。
頂上から宮城野におりてきたところで、リュックに括り付けておいた上着が無い事に気がついて、どうも、降りてくる途中で落としてきてしまったようなのです。
「どうする?諦めるか…」と一瞬脳裏によぎりましたが、もう一度、頂上まで普通の人が70分ほどで登る登山コースを登るという狂った決断を下した次第。だって、上着新調したばっかりだったんだもん。もしかしたら、頂上まで行かない途中に落ちてるかもしれないし。
なにしろ、「できない」とは言わない主義ですので。
そしたらちょうど、下山してきた人たちがいたので上着が落ちてなかったか訪ねたんです。すると、
「あったよ!大文字のところに!!」
…ほぼ、頂上です。
とにかく、日が暮れて真っ暗になる前に登っておりてこなきゃなりませんから、そのとき既に15:30で、箱根というのはこの時期16:00あたりから暮れてきて17:00には瞬きをしたらもう真っ暗というくらい一瞬で暗くなるんです。だから、30分以内で登って上着を見つけてきて、30分以内におりてこなければ登山道に電燈なんてもんはありませんから。暗闇の中では危険すぎて下山なんてできやしませんのでそこで一泊しなきゃならなくなる。
だから普通の人が70分ほどで登るところを30分で登って20分でおりてきたという離れ業をやってのけたんです。なんとか上着も拾って、無事に陽のあるうちに降りて来れたんですが、
心のたるみが原因であると、深く反省し、自分を戒めました。
とにかく、深く反省したので久しぶりの休日は箱根の温泉で疲れを癒してきましたよ。
たっぷりとね。
自分をいたわってあげる事はとても大切な事ですよ。自分の事を愛していない者に他人を愛する事なんかできるものか。そんな人は自分を傷つけるように平気で他人を傷つけてしまうよ。